メモリアルコンサート

今日は大晦日。

今年最後の投稿ではありますが、工芸のお話ではありません。

北土舎のご近所にある衣料品店、「せきとく」さんが去る12月24日に閉店されました。

衣料品店としては70年、それ以前の事業を含めると三桁に近い、或いはそれ以上の歴史あるお店です。

こちらのご主人が社交ダンス愛好家だったそうで、好きが高じて店舗の上階にダンスホールを作ってしまったほど。

コロナ禍前まで毎週のように県内外から愛好家が集まってはダンスを練習し、時に披露し合ってはパーティーを開き、この閑静な商店街の中にあってそれはそれは華やかな宴が繰り広げられていた場所があったのです。

そのせきとくさんの閉店を聞いたダンス仲間が、閉店に併せファイルコンサートを開いてくれたのでした。

ところが先月せきとくさんのご主人が急逝。

ファイナルであり、追悼でもあるメモリアルコンサートとしての開催となったのです。

そのコンサートにお邪魔しました。

会場には40人ほどの聴衆、せきとくさんに感謝の意を表した手作りの横断幕、ホールを彩る沢山の絵画、花。

そしてコンサートを傍で楽しむかのように、ご主人の満面の笑みの肖像額が用意されていました。

コンサートはギターアンサンブル「響」さんによる演奏。

スタンダードから歌謡曲、県にゆかりある童謡など楽しい構成で、演奏時間の1時間と少しはあっという間に過ぎてしまったのでした。

ふと会場の後方に目を遣ると、ご主人の愛した定席である音響設備が目に入りました。

近づいてみると、ご主人が作成したであろうお手製の進行表がパウチされてそのままにしてありました。

丁寧な直筆で、タイムテーブルが詳細に書き込まれた一枚の用紙。

ご主人がこの用紙に進行を書き込む時、どんな気持ちでペンを取ったのかと思うと、物事に熱中する瞬間の尊さ、人生の中で輝く機会は誰にでもあることを、この一枚の用紙が伝えてくれているような気がしました。

地域にあった歴史ある商店。

そこに暮らす人、人を慕って集う人。

そこから生まれる文化。

ものづくりも同じように思います。

その土地の風土で育まれてた材料、それを利用して生み出すものづくり、そして作る人。そこから生まれる文化。

そろそろ新しい年が始まります。

2024年も地域に息づく手仕事を中心に、地域の人やものごとをご紹介できたら幸いに思います。

新年は1月8日(月)から22日(月)まで開店いたします。

北土舎と共に店の運営をしてくださる竹の子さん共々どうぞよろしくお願い申し上げます。

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