この風呂桶は地域の木桶職人が、いつもの技術で、日本の木材で、全て一人で、手作りにて仕上げています。
特別なことは何もありません。気をてらわない、少し昔ならただの少し大きめな風呂桶と言ったところです。
先ずその木肌に触れてみてください。つるつるじゃありません。ざらざらでもありません。ただただ優しいのです。濡れた木肌も本当に美しいです。
そして香りを楽しんでください。檜の香りは心からリラックスさせてくれます。
木釘で連結された板の木目は整然として、それを締め付けている鉄線は力強さを感じます。
水を満たしても頑丈で大人が二人入ってもびくともしません。
細長い板を組み合わせているだけなのに、質実剛健で美しい。
誇らしい日本の木桶文化です。
木桶の風呂は入浴という日常が非日常なものになります。
でも今では旅館に行っても中々お目に掛かることはありません。
それを作ることのできる職人がほとんど居ないからです。
この風呂桶を作ったのはご高齢の職人です。ここでの風呂桶としての納品は最後になるかもしれません。
私たちは価格や利便性を追求し過ぎるあまり、大切な技術や文化を失いつつあります。
せめてこの職人の矜持を知っていただきたいと思うのです。