房州うちわの季節です。

今時うちわなんて何に使うの?なんて思った方はいませんか。

そう思った方はイベントなどで配られるプラスチック製のうちわに慣れ切ってしまっていることが予想できます。

それは茹でたそうめんなんてみんな同じじゃん。と言っているようなものです。

ご存知のとおり、名産地のそうめんは麺にコシがあって、喉越しが良くて、つゆとの絡み具合も絶妙で、価格優先のそうめんとは持って非なるものだとお分かりかと思います。

うちわも同じです。

本当のうちわは風を送ることを仕事としているため、その仕事が中途半端では産地としての面目が立ちません。

他方でイベントで配られるうちわの主な仕事は広告です。

同じうちわでも目的としている仕事が異なることから、形は似ていても私たちがそれから得るものは全く違うものなわけです。

職人が作ったうちわを手に取って欲しいと思います。その持ちやすさ、仰ぐ時の力の入れ具合、送られてくる風の量。

夏、お風呂から出て汗をひかすのにうちわを使ってみてください。その仕事に驚かされます。

そしてフォルムの美しさ。美しくなろうと思ってそんな形になった訳ではありません。仕事を追及したらその形になったのです。ちょうど競技を極めたアスリートの佇まいが美しいのと似ています。

生活のために作られた民衆工芸は絶世の美女ではなく、器量の良い町娘であって欲しい。

産地のうちわにもそんな感じが見て取れると思うのです。

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